「任意整理」と「個人再生」の2つの債務整理方法。
これらは一見似ていますが、借金の減額量や手続きの方法など細かな違いがいくつかあります。
本記事では任意整理と個人再生の違いについて、その仕組みを交えつつ解説していきます。
任意整理と個人再生の違いは何?
任意整理も個人再生も、借金が膨れ上がり苦しんでいる方の為の債務整理(借金の整理)の手続きです。
どちらも、借金を減らし借金返済の負担を今よりも軽くすることがでる手続きです。
ただしこの2つにはいくつか違いがあります。
以降で一つずつ解説していきます。
① 任意整理は個人再生よりも減らせる借金の額が少ない
任意整理は個人再生よりも借金の減額量が少ないです。
任意整理の場合、利息制限法の上限金利(15~20%)以上に払い過ぎた金利の分を減額するだけです。
もし上限金利以下の金利で借りた借金の場合は、任意整理をしたとしても減額ができません。
(ただし任意整理には、今後支払う利息を無くしたり返済回数を増やすなど、借金返済の負担を減らす処置も併せて用意されています)。
一方で個人再生の場合、借金を1/5~最大1/10まで大きく減らすことができます。
減額できる借金は、任意整理<個人再生<自己破産の順に大きくなります。
借金がそこまで多くない方は任意整理、借金が多く返済が難しい方は個人再生、借金が膨大でどうにもならない方は最上位の自己破産の選択も視野に入ってきます。
② 任意整理は裁判所をさない、個人再生は通す
任意整理は裁判所を通しません。
任意整理は貸金業者と直接交渉して借金の整理を行う形となりますので、家族に債務整理がバレるリスクは殆どありません。
一方で、個人再生は裁判所を通します。
裁判所に再生計画を提出し、裁判所指導の下で債務整理が行われます。
この際、裁判所側に家計収支の証明資料を提出する必要があり、自宅に裁判関連の資料が届きます。
場合によっては裁判所の出頭が求められることも。
このため個人再生を行うと、債務整理の事実が家族にバレるリスクがあります。
③ 任意整理は債務を選んで整理できる、個人再生はすべてを整理
任意整理の場合、整理する債務は任意で選べます。
「子供の学費の借金だけ整理する」、「車の借金は整理しない」と任意で選ぶことができます。
もっと言えば任意整理を行えば「保証人への借金は整理しない」といった形をとる事もできます。
意図的に保証人への請求をを防ぎ、保証人を巻き込まずに済ますこともできるのです。
個人再生を行った場合、債務の”すべて”を整理する必要があります。
「あの借金だけ整理する」、「この借金は整理しない」といったような選択はできず、保証人がいる場合、保証人に請求がいく恐れもあります。
④ 任意整理は「官報」に名前が載らない、個人再生は名前が載る
任意整理の場合、国が管理する機関紙「官報」に自身の名前は載りません。
個人再生の場合は名前が載ります。
とはいえ官報に記載されている名前をわざわざ確認する人は少ないため、直接具体的なリスクが生まれることは殆どありません。
任意整理と個人再生には以上のような違いがあります。
任意整理と個人再生で共通すること
一方で任意整理、個人再生でどちらにも共通する点もあります。
以下で一つずつ解説します。
① どちらも安定した収入がないと利用できない
任意整理、個人再生どちらの場合であっても、安定した収入がないと利用できません。
安定した収入があり返済の余地のある方のみに許された手段です。
安定した収入もなく借金も手に負えない方の場合は、自己破産が選択肢となってきます。
② どちらも返済期間は同じ
任意整理、個人再生どちらの場合であっても、債務整理後の借金の返済期間は3年、最大で5年までとなります。
③ どちらも信用情報機関に記録が残る
任意整理、個人再生どちらの場合であっても、「信用情報機関」に債務整理した記録が5~10年間残ります。
このため向こう5~10年の間は新たな借入ができなくなり、クレジットカードの新規発行もできなくなります。
④ どちらも財産までは奪われない
任意整理、個人再生どちらの場合であっても、自己破産のように家や自動車、株式等の財産を取り上げられることはありません。
⑤ どちらも職業制限はない
任意整理、個人再生どちらの場合であっても、自己破産のように士業や警備業などの一部の職業に就けなくなるルールはありません。
以上の点は任意整理、個人再生どちらにも共通する点です。
任意整理と個人再生どちらが良いのか?
任意整理と個人再生のどちらが良いかは、一長一短ですので置かれてる境遇によります。
借金額が多すぎてとても返済できないような状況ですと、任意整理では賄いきれない事があるため、個人再生で一気に減額した方がその後の生活は楽になります。
逆に借金額がそれほど多くない場合は、家族にもバレにくく、保証人への請求も防ぐことができ、官報にも載らない任意整理の方がおすすめでしょう。
最悪の場合は自己破産
自己破産は、借金をすべてゼロにすることができます。
借金が莫大で個人再生をしても返済が到底不可能な方、安定した収入がなく任意整理・個人再生が利用できない方の場合は、自己破産が選択肢となってきます。
自己破産は借金が1憶円あろうと10憶円あろうと帳消しにできますが、その分、家や自動車などの財産までもが差し押さえとなり無くなります。
また信用情報機関や官報にも記録が残り、士業や警備業など一部の職業に就く事も制限されます。
自己破産はその代償として失うものも多いため、あくまで最終手段的な債務整理方法となります。
まとめ
以上、任意整理・個人再生の違いとなります。
任意整理と個人再生は一見似てはいますが、細かい部分で違いがありますので、行う場合はよく理解した上で慎重に選ぶことが大事です。
不安な方は法律の専門家に相談してみるのも良いでしょう。
参考サイト/松谷司法書士事務所/任意整理と個人再生のどちらを選ぶ?
https://saimuseiri.kabarai-sp.jp/choice-niniseiri-or-saisei.html
年齢:32
性別:男
プロフィール:
法学部卒。法律やお金、債務整理が専門のライターです。
借金苦の方の手助けになる情報を発信しています。